姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.48 揺蕩うクラゲと、苛立ちと
家の中もそれはそれは立派だった。
リビングなんてどこかのホテルの大広間くらいの広さがあって、でっかい暖炉や最新の大型テレビが鎮座している。
部屋の中はすでに温められていて、冷えた体にじんわり熱が沁みていく。
8人は座れそうなおしゃれなダイニングテーブルにはアフタヌーンティーセット。
かわいい焼き菓子がキラキラ光って私を呼んでいた。
すごい、なにもかもがすごすぎる。
チャラくてヘラい奴だけど、本物のお坊ちゃまだったんだ。
「まぁテキトーに座ってよ。」
アイランドキッチンに立ち紅茶を用意している榛名聖が、「どうぞ」と広いリビングダイニングに向かって手を広げた。
ちなみにお手伝いさんたちには下がってもらっていた。私達ががのびのびできないからだって。
「相変わらず広ぇなー、聖ん家。」
真っ先にダイニングテーブルのキッチンに近い端の席に座ったのは広瀬真だ。
ゆっくりと視線を動かして室内を一望してから、感心するようにそう言って頬杖をついた。
「ウチってパーティー好きだからねぇ。ゲスト呼びまくる想定で造ってるの。」
ほのぼのとした雰囲気に慌てて私も広瀬真の向かいに座る。続いてその隣に近江涼介が腰かけた。
「そういや榛名家って毎年ド派手なクリスマスパーティー開いてなかったっけ?いいのか?こんなところにいて。」
蒸らされた紅茶が順繰りに4人のティーカップに注がれていく。
なんの茶葉かわからないけど、豪華な雰囲気も相まってなんかいつもより高貴な香りがただよっている気がした。
「いいのいいの~。今年はクリスマスはおまけで、長兄の部長就任のお祝い会だから。俺はお呼びじゃないの〜。
……それに、なんかパーッと遊びたい気分だったし。」
ティーポットの注ぎ口から、ポタンと雫が落ちてカップの中に波紋を起こす。
一瞬榛名聖の目に光がなくなった気がした。
「主役がいればいいでしょ~?」
けれど、違和感を覚える前にふっとその目が細くなり微笑みが浮かぶ。
淹れ終えた紅茶をトレイに乗せて運びながら、榛名聖は緩い口調でそう言った。
全員に紅茶を配り終えると広瀬真の隣に榛名聖が座り、舞台がかなり違うものの紅茶を囲むいつもの時間が流れていった。