姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
楽しそうにはしゃぐ声。
3人が子どもの戯れ合いのように遊んでいる。
(……楽しそうだ。)
そう“思うだけ”。自分の心は静かだった。
冷たい雪面が賑やかな声を吸い取り、雪を踏む足音が遠のいていく。
眩しさに目が眩む様に双眸を細めるその顔に、翳りが見えた。
「!?」
突然顔面に浴びせられた冷たい衝撃に、流石の涼介も驚いて目を見開く。
雪玉の強烈な一撃をお見舞いしたのは、姫だ。
「あっはっはっはー!いい顔になったじゃない!
無関係ですって顔してるからよ!いい気味ー!」
近江涼介は珍しくぽかんとした顔をして固まっている。
崩れたポーカーフェイスにスカッとして、その顔を指さして思い切り笑ってやった。
丸く大きくなった近江涼介の目に、街灯のオレンジ色の光が差し込んでキラリと光る。
かと思えば次の瞬間、また無表情に戻って私に雪玉を投げつけてきた。
――が、私はそれをひょい。
「へへーん。アンタがサボってた時間分、私の方が経験値高いのよ!
1つも当たる気がしな………ぶッ!」
いつのまに忍ばせていたのか、至近距離で投げられた雪玉が顔にクリティカルヒットした。
おまけに喋ってたせいで雪が口に入ってしまった。
「っ、もー!最悪……!」
たまらず顔を顰めてペッペッと雪を吐き出し、口元を拭う。
鋭い冷たさにジンジンと顔が痛んだ。
「――ひどい顔。」
近江涼介が私の濡れた前髪を指でそっと流し、小さく笑う。
弧を描く唇から白い息がほわりと漏れ出す。
その鼻の頭は赤く、頬や耳にも血の色が差していた。
「はぁん!?雪玉食らっても私は美少女のままですけど!?」
(さっきは少し暗いように見えたけど――まぁ、大丈夫そう?)
「ちょっと涼ちゃん、1人だけやらないなんてなしだよ〜?」
「そうだぞ涼介!真面目にやれ!」
近江涼介も雪玉飛び交う渦中に引き込み、私達は気づけば1時間は雪合戦をしていた。