姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

新年のお祭りムードで賑わう境内を、2人並んで歩く。

ちょっと前は近江涼介と2人だとあんまり喋ることなかったけど、今日はなんだかんだ会話が続いた。


白い息が交互に浮かんでは消える。

辿々しく歩く私の速度に近江涼介が合わせてくれて、時々肩がトンと当たる。

おみくじ引いたり甘酒飲んだり、こんなもんかと何回でも思うけど、まぁ悪くない気はする。



「ところで、聖と真は?」

午前10時。
本堂を出て、屋台が並ぶ参道を歩きながら近江涼介が今更なことを聞いてきた。

「知らない。電話したのに繋がらなかった。」

右手に綿飴を持ち、左手に持ったフランクフルトを齧りながら不機嫌に私は答えた。

初詣、みんなで行きたかったのに。

「……家の事情だろ、多分。」

私の不満を感じ取ったのか、私に持たされた焼きそば片手に淡々と近江涼介が言った。

「初詣なんて、来年でもいつでも行けるだろ。」

至極当たり前のように言い放った言葉が、私の意表をついてキョトンとする。


そっか、来年。それがダメでも再来年。


「こういう雰囲気がいいなら、夏祭りもあるしな。」


春も夏も秋も冬も?

その発想はなかった。

途端にワクワクして胸が膨らんで、笑顔が込み上げてくる。

友達って、いつまでも続くのか。

「すごいね友達!」

「何言ってんだお前。」

嬉しい発見に目を輝かせる私に、近江涼介は怪訝な顔をする。

「夏祭りも、行こうね!」

鼻歌まで歌って上機嫌に参道を歩く。
子どもみたいな浮かれ様を、近江涼介はじっと見つめて“しょうがないな”と息を吐く。

「気が向いたらな。」

ほんの少し眉尻を垂らして片笑う。
その表情には仄かな感情の色が滲んでいた。
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