姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.57 パンダかツチノコか
私の新しいクラス――2年A組の教室は、校舎前の惨状には劣るが色めきだっている。
H2Oが全員同じ教室に放り込まれた上、類稀なる美少女の私がいるのだから当然だ。
「相変わらず気持ちいいくらいの自分アゲだね〜。」
「もはや病気だ。ビョーキ。」
ふたつ前の席に座る、ヘラヘラ顔の榛名聖と、ひとつ前の席の顰めっ面の広瀬真が後ろを向いて私を見た。
新しいクラスの席は名簿順。は・ひ・ふから始まる苗字の私たち3人は、見事に3連並んだ席になった。
広瀬真が教室にいるのは見慣れたけど、榛名聖がいるのは変な感じ。
あと、近江涼介も。
1人だけあ行なせいで、廊下に面する壁側の1番後ろの席でポツンと頬杖をついて座っている近江涼介を見る。
周りの奴らが全く忍べていないけど、一応盗み見ている態度で近江涼介に注目している。
そんなの全く気にならないどころか、存在すら認識していないと言った様子だ。
私達にも羨望の眼差しに恋慕の眼差し、嫉妬、嫌悪、詮索といろんな視線を感じるけど、それだけで特に害はない。
「私がモテるのもあんたらが騒がれるのも慣れてるけど、やっぱりこのくらいの節度がちょうどいいわね。
さっきの騒動は復讐的に最高だったけどー♡」
腹黒いセリフは他の人には聞こえないように、そして表情には純真無垢な笑顔を貼り付ける。
3人と一緒に歩いていた時に見えた女共の悔しそうな顔だったり、動揺したり羨ましがっていたりな表情はバッチリ堪能した。
あの数の女を一気に攻撃できる破壊力、H2O様々。
今だけ感謝してあげてもいい。
「コイツ、次は助けなくていいな。」
「また助けてね♡広瀬くん♡」
「そんなこと言って、いざとなったらまーくんは真っ先に助けちゃうだろうねぇ。」
「……俺、コイツらに挟まれてんのイヤになってきたわ……。」