姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

***

体育館裏に着くや否や、大勢の女が私を睨む。
なんだかやけに数が多い。軽く1クラス分くらい?

殺風景の体育館裏を殺伐とした空気が満たしている。
今日は追い詰められない様に、なるべく広いところで立ち止まった。

「なんで呼び出されたか、わかる?」

この間とは別のリーダー格の女が、腕を組んで強気な態度で私を威圧しようとする。

「えー……?なんでだろ?」

どんなに凄まれようが囲まれようが私の心は至って冷静。
男の前でするみたいな可愛い笑顔だって作れる。


女の瞼がピキッと動いて、顔が真ます険しくなる。


当たり前か、わざと煽ってるんだもん。

「あんたが人のモノ盗るからでしょ!」

抑えきれない怒りでにじり寄られた分だけ後退する。

そしたら結局背の高い柵のところに追いやられてしまった。

私を裁く正義面した大勢の憎悪の眼差し。


――そんなものにはもう慣れすぎて慣れすぎて……
私の心は場にそぐわない平常心だ。

「なんでアンタなんかに会長を盗られなくちゃいけないの!?」

……会長?その取り巻き?

予想外の人物が飛び出して、ヒステリックに怒鳴った女を見てぽかんとする。

確かに奴は人気だけど、これは流石に多すぎない?

そんな疑問は瞬く間に解決することになる。

「そうよ!なんで近江くんが……!」
「澤田先輩だって!」
「高橋くんも……!」

出るわ出るわ、1人言い出したら次々男の名前が飛び出してくる。

H2O、サッカー部のキャプテン、バスケ部のエース……
どれも私が誑かしてきた男の名前だ。

そうか、わかった。
この集団はひと呼んで“藤澤姫被害者の会”だ。
< 20 / 874 >

この作品をシェア

pagetop