姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
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体育館裏に着くや否や、大勢の女が私を睨む。
なんだかやけに数が多い。軽く1クラス分くらい?
殺風景の体育館裏を殺伐とした空気が満たしている。
今日は追い詰められない様に、なるべく広いところで立ち止まった。
「なんで呼び出されたか、わかる?」
この間とは別のリーダー格の女が、腕を組んで強気な態度で私を威圧しようとする。
「えー……?なんでだろ?」
どんなに凄まれようが囲まれようが私の心は至って冷静。
男の前でするみたいな可愛い笑顔だって作れる。
女の瞼がピキッと動いて、顔が真ます険しくなる。
当たり前か、わざと煽ってるんだもん。
「あんたが人のモノ盗るからでしょ!」
抑えきれない怒りでにじり寄られた分だけ後退する。
そしたら結局背の高い柵のところに追いやられてしまった。
私を裁く正義面した大勢の憎悪の眼差し。
――そんなものにはもう慣れすぎて慣れすぎて……
私の心は場にそぐわない平常心だ。
「なんでアンタなんかに会長を盗られなくちゃいけないの!?」
……会長?その取り巻き?
予想外の人物が飛び出して、ヒステリックに怒鳴った女を見てぽかんとする。
確かに奴は人気だけど、これは流石に多すぎない?
そんな疑問は瞬く間に解決することになる。
「そうよ!なんで近江くんが……!」
「澤田先輩だって!」
「高橋くんも……!」
出るわ出るわ、1人言い出したら次々男の名前が飛び出してくる。
H2O、サッカー部のキャプテン、バスケ部のエース……
どれも私が誑かしてきた男の名前だ。
そうか、わかった。
この集団はひと呼んで“藤澤姫被害者の会”だ。