姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.79 欲しかったもの
穏やかな空気が漂う夕暮れの公園。
そこに、無機質なスマホの振動音が鳴り響く。
画面上の名前一気に青ざめた。
「げっ、渉兄ちゃん!
傑兄ちゃんがチクったな……あーもう、怒られる!」
甘々の傑兄ちゃんと違って、渉兄ちゃんは叱る時はちゃんと叱ってくるのだ。しかもめちゃくちゃ怖い。
「渉兄ちゃん、ごめんなさい!!」
ギュッと目を瞑り、覚悟して通話に応じる。
「――え?」
受話器から聞こえた予想外の言葉に、間抜けな声が出た。