姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
榛名聖の目が、何度も瞬く。
それを繰り返すごとに、目に光が宿っていく。

するりと、榛名聖が優しく私の手を掴んで離させて俯く。

「もー……でっかい声で恥ずかしいことをペラペラと……。」

握った手は離れない。
どんな顔をしているのかと、下を向く頭を見つめた。

風が、二人の間だけ静かに吹き抜けた。

「もうおしまいかなって思ってだのに……
ひーちゃんてホントめちゃくちゃだよねぇ。」


笑ってる。

いつものヘラヘラ笑いじゃない。
困ったような照れたような、とにかく本物の笑顔だった。


「はー、バカらし。
あれだけ突き放したら普通離れていくでしょ。
逆に距離詰めてくるとか頭おかしいんじゃないの〜?」

「離れるわけないでしょ!友達なのに!」

普通に話せたことが嬉しくて、ちょっと声が上擦った。

榛名聖は一瞬驚いた顔をして、少し黙る。
そして、ゆっくり立ち上がると私とちゃんと向き合った。

「……ヒドイこといってごめんね、ひーちゃん。」

素直な仲直りの合図に、心拍数が急上昇する。

でもどうしよう。こんな時なんて言えば……

真っ白になった頭に、近江涼介のあの仕草が浮かんだ。

――あ、そうだ。

「!?」

榛名聖の柔らかな髪を両手で撫でて掻き乱す。
夕日がキャラメルブラウンの髪に当たって、キラキラと輝いていた。

「……許す!でも広瀬真にも謝ること!」

ちょっと気恥ずかしくて顰めっ面。
そんな私を見て、榛名聖はくすぐったそうに笑っていた。
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