姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
榛名聖はテーブルを挟んで向かい側で、仲良さげにじゃれあう兄妹をじっと見つめる。

(“ズルい”じゃなくて、“羨ましい”、か。)


――不思議と気持ちが穏やかだ。
温かな家族の団欒の中にいることを心地いいとさえ思う。

そんな俺の視線に気づいて、ひーちゃんと傑さんが同じ顔で怪訝な表情をした。

「何だよ聖。少ししか食ってないじゃんか。」

「アイツ実はすごい家のお坊ちゃんだから。
庶民の家庭料理なんて口に合わないと思ってんのよ、多分。」

「ァア゛ン?気に入らねーなぁ。」

素早く俺の隣に移動した傑さんが、俺の取皿から唐揚げを箸で掴んで口元に近づけてきた。

「ちょ……!やめてくださいって。自分で食べるから!」

「うるせぇ、いいから食え!」

唐揚げから逃げるように上体を反らせる。

家族の輪の中にいれてもらったような気持ち。

楽しい。嬉しい。
くすぐったい。


胸を打つ様な衝撃はない。
でもじんわりと満たされていくこの感動を、俺は一生忘れない。


向かい側で、俺と傑さんの攻防を笑っているひーちゃんを見つめる。

心が内側から溶けていく様に温かい。

生まれて初めて俺の手を取ってくれた彼女のことを、とても大切だと思った。


……ちなみにこの後、傑さんはしっかり渉さんに叱られていた。
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