姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「あれ〜?この沿線って、涼ちゃん通学で使ってるよね?
お家、このお祭りの辺り?」

「……まぁ、近いな。」


リストの中の“緑町夏祭り”と書かれた一点をぼんやり見つめて、近江涼介はポツリと答える。

その瞳が翳っているのを、榛名聖は見逃さない。

「涼ちゃん大丈夫?やめとく?」


詳しい事情は知らないけど。

かつて愛情に飢えた自分と“同類”と判定したくらいだから、ワケありなことはなんとなく察しがつく。

近江涼介は少し考える様な素振りを見せる。

――が、こちらに全く気づかずはしゃいでいる姫を見ると願いを叶えてやりたくなる。

「……いや、いい。」

「ん、そっか。」

窓からは木陰を突き抜ける真夏の太陽がキラキラと室内を照らしている。

去年とは違う、ドキドキワクワクの夏休み!

『あんまりいたくないから?家とか地元に。』

私はこの後、いつか近江涼介が言っていた言葉の理由を知ることになるんだけど――

それはもう少し先のお話。

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