姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
おまけ:あの日の渉さんとのやりとり
side.榛名聖
初めてひーちゃんのお家で夕飯を食べた日。
俺は家族の団欒というものを生まれて初めて目の当たりにして、不思議な気持ちになっていた。
ひーちゃんと傑さんはお腹が満たされると、テレビの前の小さなソファに座って2人仲良くバラエティ番組を観て盛り上がっている。
俺はといえば食後のお茶までご馳走になって、渉さんと2人並んでダイニングチェアに座っていた。
「うるさいでしょ、ウチ。」
言いつつ微笑ましそうに兄妹の様子を見守っている渉さん。
その視線は母親の様な母性さえ感じる。
「まぁ…賑やか、ですねぇ。」
何て返していいかわからず、当たり障りのないことを言った。
それでも渉さんは全てを受け止めるかの様な優しい笑顔だ。
「よかったらいつでもご飯食べにきてよ。
食べてくれる人が多い方が俺も作りがいあるしさ。」
意外な誘いでびっくりした。
今日は妹のフォローのためだとして、それ以外で俺を招き入れる理由はないと思ったから。
なんなら、可愛い妹に近づく害虫と見做されているとさえ感じていたのに。
「……いや、なんかさ、聖くんって姫に似てるなって思って。」
驚きが顔に出ていたのだろう、俺の疑問を察して答えてくれる。