姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
みんなで海の家の看板引っ提げ、賑わう砂浜をゾロゾロと歩く。
海のジャガイモ共は敗北感からひっそりといなくなっていく。
女共は興奮気味にこっちを見ているけど、誰も声をかけてこない。
何の宣伝にもならないまま、海の家へと帰っていった。
「ちょっと傑!目離した隙にどこ行ってたの……
って、うーわ、すごい威圧感。」
ベニヤ板をつぎはぎして作ったようなレトロな建物には、手書きのペンキ文字で“海の家 凪”の看板が掲げられている。
その店頭で笑顔で客寄せをしていた女が私達を見てギョッとした。
――ちなみにこの人が先日の電話主。
傑兄ちゃんの友達こと有馬 美咲だ。
さらにちなみに言えば、近江涼介と初詣に行った日に傑兄ちゃんを引きずっていったあの人である。
明るいカッパーブラウンの髪を後ろでひとつに束ね、ハツラツと喋る様子は、海の家の売り子そのものだ。
「男5人で固まってたら怖くてお客さん寄り付かないでしょ!」
小学生男子を叱りつけるお母さんのように、有馬美咲は元々キリッとしていた眉をさらに吊り上がらせる。
数時間前に対面した時はそこらの女と同じようにH2Oを前に頬を染めはしゃいでいたのに、慣れてきたら奴らの愛想のなさと海の家のバイト適性のなさに気づいてこの態度だ。