姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「ありがとうございまーす!」

濃い青空に突き抜ける明るい声。

見れば、そこにはドリンクを売る傑の姿があった。

小さな子どもの目線に合わせてしゃがみ込み、その子の頭を撫でながらペットボトルのジュースを手渡している。

会釈した両親にも気さくに手を振り、その人懐っこさが周りの人を惹きつける。

顔は姫なのに、姫ではあり得ない行動と表情をする傑。

これにはさすがの涼介も違和感を禁じ得ず、ほんの少し眉を顰めた。

「ほんと人たらしだよねー、アイツ!」

涼介の手からかき氷を奪い、客に手渡す。
営業スマイルの奥に、傑への好意が滲んでいる。

「老若男女、誰彼構わず優しくしてさぁ。
すぐ友達になっちゃうの。すごいよね。」

(――それは一体誰のことだ?)

涼介の眉間の皺が深くなる。

“傑”という人物名の前には“姫みたいな顔の”という装飾語が付く。
だからまず姫の性格を想起してしまう。

仮に傑単体でイメージしたとしても、人を「姫とその他大勢」みたいに扱う姿しか見たことがないためイマイチピンとこなかった。

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