姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.8 本当に起こった
「お待たせしましたぁ♡用事ってなんですかー?」
翌日の昼休み、今回は久々に本当の愛の告白を受けに校舎裏にいた。
この私を呼び出した人物――目の前にいる気弱そうなモヤシは、もじもじと恥ずかしそうに下を向いて口元をまごつかせている。
……言いたいことあるなら言ってよね。
早く旧校舎に行って金髪に一発食らわせなきゃなんだから。
心の中でタンタンタンと片足で地面を叩く。
もちろん表面上は立てば芍薬の佇まいだ。
「あの、どうかしまし……」
「姫ちゃんはッ!H2Oの誰かと交際してるんですか!?」
勢い良く顔を上げたかと思えば私の言葉に被せて、こんな近距離なのに馬鹿でかい声で問いかけられた。
すぐハッとしてまた俯いてもごもごやりだしたけど。
なんなんだ。
「え……、と?私がH2Oの誰かと交際してるか、って?
交際、交…際……」
ん?
「ばっ……!」
………っかじゃないのアンタ!!!
危うく声を荒げそうになったのをなんとか喉で食い止める。
爪先立ちになるほど前のめりになった体も振り上げた拳も、光の速さで引っ込めた。
いやいやいや、ないから!
絶ッッッ対ないから!あんな冷血漢とヘラヘラと各所が低いやつなんか、お断りですけども!!!
はっ、待てよ?
ここで私は冷静になる。頭脳派姫さま誕生の瞬間であった。