姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「あ、ひーちゃん。これ頼まれてた焼きそば〜。」

「え?私頼んでないけど……」

差し出された焼きそばを受け取り、そう言いかけてハッとする。

(近江涼介が頼んでくれたのか。)

買ったばかりなのか、プラスチックの容器越しに手のひらに焼きそばの熱が伝わる。

近江涼介の優しさを感じるほど、さっきの痛そうな顔が胸を抉って喉の奥がキュッと締まる。

だけど、何も言ってはいけない。しちゃいけない。

私は無心で割り箸を割って、容器の蓋を開けた。

「お腹空いた!食べる。」

コイツら以外誰も見ていないから、見た目も気にせずモリモリと焼きそばを頬張る。

「お前は花より団子かよ。」
「花火より焼きそばだねぇ。」

言いながら広瀬真と榛名聖も神社の外壁に凭れてたこ焼きやらお好み焼きやらを取り出し、腰を落ち着け始めた。

榛名聖は近江涼介にも自分とお好み焼きを渡して、建物の隙間に上がる花火をみんなで見上げる。

「THE・夏!って感じだねぇ。」

ヘラヘラと楽しそうに笑う榛名聖に、今日ばかりはちょっと同意。

口いっぱいのソースの味と、光る夜空、温い空気、胸に響く花火の音。

胸には、モヤモヤが残る。

だけど、近江涼介が辛い思いをするのなら、それもなんだか夏らしいって思うことにした。
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