姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
番外編:なんでもないただの1日 side 榛名聖
AM7:00
AM 7:00
「おはようございます、聖さん。朝です。」
だだっ広い部屋にドアをノックする音が響く。
朝は苦手だ。鳴り続ける煩わしい音を無視して布団で顔の半分くらいを覆うと、今度はガチャリとドアが開く音が聞こえた。
「カーテンを開けさせていただきます。遅刻してしまいますよ。」
多分60代後半くらいのエプロンと三角巾をつけた女が入ってきて、3箇所あるカーテンを容赦なく全開にする。
夏の太陽は朝も眩しくて、眠たい顔にその日差しが直撃して眉を顰めた。
「ひどいよ〜高井さん。もっと優しく起こしてくれません?」
仕方なく体を起こして欠伸をしながらせっせと動き回っている老婆の方を見る。
この俺が高井さんと呼んだ女性は、榛名お抱えの住み込みのハウスキーパーさん。ちなみに俺が中学2年生になった頃から勤めてくれている。
その前までいた俺の生い立ちを噂のタネにしていた人はもう残っていないってこと。
「高校生になって夜遊びをしなくなったのは立派ですが、いつまで経っても朝が弱いのは変わりませんね。
顔を洗ってきてください、遅刻しますよ。」
「はぁい。」
高井さんは仕事に真面目で冷静、粛々と仕事をこなすタイプだから楽。
俺の生い立ちに変に肩入れも同情もしないし、かと言って面白がることもない。
ハウスキーパーがこの人に変わってから随分過ごしやすくなった。非行をやめたのも家にいるのが気楽になったことが結構響いてる。
ようやくベッドから降りて、クローゼットから制服を取り出し着替える。
朝が弱い俺にとって、支度は時間との勝負。
まぁ遅刻したらしたで別に構わないんだけど、高井さんがうるさいし一応間に合わせないとね〜。