姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「涼ちゃん、こっちにおいで。」
「まぁまー。」
「フフ、可愛い私の涼ちゃん。だーいすき。」
たどたどしく走る我が子を優しく抱きしめ笑う母。
それを優しく見守る父。
あれから2年が経った今も、“同じ幸せ”が続いていた。
――ただ、それは“偽り”だから、やっぱり歪みはあるのだ。
「涼ちゃん、絵本なんて興味ないよねぇ?
“涼ちゃんが好きなのは”ブロック遊びでしょう?」
「“涼ちゃん”はご飯をたくさん食べる子なのに……
全然食べないとママ、心配だな。」
物心ついたときには、そんなことを1日の中で何度も言われるのが日常になっていた。
「楽しいねぇ、涼ちゃん。」
絵本を取り上げてブロックや乗り物のおもちゃを渡してきた母は、曇りのない笑顔でそんなことを言う。
(楽しい……これが?)
子ども心にそんな感じのことを思ったのを覚えてる。
片付けられた絵本を盗み見て、もっと見たかったなとぼんやり思いながら。