姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「涼ちゃん、こっちにおいで。」

「まぁまー。」

「フフ、可愛い私の涼ちゃん。だーいすき。」

たどたどしく走る我が子を優しく抱きしめ笑う母。
それを優しく見守る父。

あれから2年が経った今も、“同じ幸せ”が続いていた。

――ただ、それは“偽り”だから、やっぱり歪みはあるのだ。

「涼ちゃん、絵本なんて興味ないよねぇ?
“涼ちゃんが好きなのは”ブロック遊びでしょう?」

「“涼ちゃん”はご飯をたくさん食べる子なのに……
全然食べないとママ、心配だな。」

物心ついたときには、そんなことを1日の中で何度も言われるのが日常になっていた。

「楽しいねぇ、涼ちゃん。」

絵本を取り上げてブロックや乗り物のおもちゃを渡してきた母は、曇りのない笑顔でそんなことを言う。

(楽しい……これが?)

子ども心にそんな感じのことを思ったのを覚えてる。

片付けられた絵本を盗み見て、もっと見たかったなとぼんやり思いながら。
< 410 / 874 >

この作品をシェア

pagetop