姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
近江涼介の表情は変わらない。でも私を宥めようとするその手は優しくて、胸が詰まる。
「……殴られてることに気づいてほしい。」
「知ってる。」
「傷ついたことも自覚してほしい。」
「ちゃんとしてる。」
「そしたら助かりたいって思ってほしい、助けるから。」
私の頭に置かれた手が、ぐしゃぐしゃに髪を掻き乱す。
「心配かけて悪かった。けど、今日はもう帰れ。」
はぐらかされた。
「……広瀬真も榛名聖もアンタを心配してるから。
2人にも全部話すから!」
それ以上はもうどうしていいかもわからない。
でも黙って引き下がるのも嫌で、強がってキッと険しい顔を作って見せてから部屋を出た。
薄暗い廊下で、ドアに背をついて崩れ落ちる。
まだ触れられた感触の残る頭を抱えて、髪を握りしめ呟いた。
「――どうすればいいのよ、もう。」