姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
#真の過去 side.広瀬真
Ep.138 冷めない熱と、冷たい家
人のいない階段を、勢いに任せて屋上から一階まで一気に駆け降りる。
(何だこれ、何だこれ……!)
玄関に近づいていくとまばらに下校する生徒が増えてきて、それでも人を避けながら走って校舎を飛び出した。
ひんやりとした風が熱くなった顔を撫でていくが、少しも冷める気配がない。
空を見たり地面を見たりしながら、どうにかして心を落ち着けようとフーッと深呼吸をする。
(何でこんな動揺してんだ!?俺!)
落ち着け、俺。動悸がするのは走ったからだ。
アイツを受け止めた時確かに心臓に衝撃を受けた、……が、走ったからだ!
思わず抱き止めてしまった時の、姫の感触を思い出す。
折れそうなほど薄くて、なのに少し柔らかくて、自分とは違う生き物みたいな……
……ハッ!
おお思い出すな、こんなもん!
聖の言う通り、俺がムッツリみたいじゃねぇか!
(……甘ったるいアイツの匂いがまだする気がする!)