姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「おや、坊ちゃん。どうしたんです?」
家の玄関でぼうっと座り込んでいた俺に、偶然通りかかった料理長の高橋さんが後ろから声をかけてきた。
高橋さんは元は有名な料亭の料理人。
父が彼を気に入って、父が広瀬の会社に入った十数年前からウチで抱え始めたすごい人。
見た目は優しそうな中年のおじさんだけど。
振り返りはしたが何も答えない俺の隣に、高橋さんはしゃがみ込む。
「この後は何のレッスンなんですか?」
「……先生が急病で、1時間後まで何もない。」
「そうですか。」
「だから宿題をする」
――そう言おうとしたのに、先に話し出したのはにっこりと優しく笑う高橋さんだった。
「それなら、私と少し遊びましょう。」