姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「冗談はさておき。ご令嬢方が“広瀬の”真くんにご挨拶申し上げたいって言ってるよ〜?どう?行ってあげたら?」

聖が視線で4人くらいの令嬢の集団を指し示す。
俺がそっちを見ると、チラチラとこちらの様子を伺っていたその中の1人と目が合って、令嬢達が静かに色めき立ち始めた。

「いい、興味ない。」

それを煩わしいと思えば、素っ気なく視線を前方に戻す。
令嬢達に俺と繋ぐよう頼まれたであろう聖も、特に食い下がることもなくあっさりと引き下がった。

「あら、やっぱり?硬派だよねぇ、真くんは。
減るもんじゃないし、お話しするくらいしてあげたらいいのに〜。」

「俺の家柄目当ての奴らだろ。どいつもこいつも同じようなことしか言わねぇし時間の無駄だろ。
それにあんな家のどこがいいんだ。事故物件だろ。人生食い潰されるぞ。」

短い溜息と共にそう言うと、聖がクスクスと笑いだす。

「……何だよ?」

「いや?真くんも言うようになったなぁと思って〜。
数年前までウジウジもじもじしてたのにねぇ。」

口元に手を当てて笑っている様は完璧に馬鹿にしている態度だ。
おまけに昔のことを引き合いに出されると何も言い返せず、羞恥心で体温が上がる。

「……うるせぇよ!」

「やっぱり貞淑なレディよりひーちゃんみたいに野生味がある方がお好み?見た目だけはここの誰より貞淑そうだけどね〜。」

「アイツは関係ねーだろ!ただ興味がねぇだけだ!」

「またまた〜。恋する乙女の癖にぃ。」

「乙女じゃねぇ!恋もしてねぇ!」

上辺だけの建前が行き交う社交場の片隅で、小声ではあるがまるで学校にいる時かのようなくだらない会話をして緊張していた空気も緩んだ。
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