姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
天音ちゃんは「呆然」と顔に書かれているかのような表情で立ち尽くしている。
そう言えばさっきも彼女を蚊帳の外にして近江涼介と喋りまくっちゃったし、もしかして怒ってるのかも?
「あの、天音ちゃん……?」
冬なのに冷や汗をかきながら、ご機嫌を伺う様に控え目にその名前を呼ぶ。
天音ちゃんはまだ目を見開いたまま。
だけど、その目はキラキラと輝いている。
「彼、優しいんですね。」
「えっ?」
予想もしていない発言に素っ頓狂な声が出る。
話の展開についていけなくて今度は私の目が丸くなる中で、天音ちゃんは話続ける。
「あんな風に女性に気遣える男性を初めて見ました。
彼の様な人は女性を弄ぶ悪者、と決めつけていたのに……少し興味が湧きました。」
天音ちゃんが柔らかに微笑む。
その表情を作らせる感情の正体を、私はよく知っている。
これは、好意のある異性を見ている時の顔だ。
心臓がキンと張り詰めて、ドクンドクンと脈打つ度に嫌な感覚を覚える。
芽生えたばかりの自分の感情にも、私の様子にも気づかない天音ちゃんは「さて何を食べましょうか。」と私に無邪気に微笑みかける。
どうしよう。こんな時、どうすれば?
ざわつく心を収めたくて唾を飲み、得意の笑顔で焦りを隠す。
自分の緊張の理由はわからない。
でも、これだけは確実だ。
天音ちゃんが、私の友達に恋をした。