姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.177 “協力”しなくちゃ


「あけましておめでとう〜。久しぶりだねぇ、ひーちゃん。」

「おめでとー。榛名聖は元気してた?」

新年の挨拶が飛び交う朝の教室で、いつもよりはすこし早めにやって来た榛名聖が、背後から声をかけてきた。
ちなみに、近江涼介と広瀬真はまだ登校していない。

「うわ、ひーちゃんどうしたの〜?
なんかクマすごいけど。」

私の前の席である広瀬真の席に座り、振り向いて私の顔を見た榛名聖が驚いて目を丸くする。

「んー、最近ちょっと夜更かし気味で。
コンシーラーでクマ隠ししたつもりだったんだけど、隠れてない?コレ。」

「規則正しい生活してるひーちゃんが夜更かしなんて珍しいねぇ。
薄くはなってるんだろうけど隠しきれてないし、この辺ヨレてるよ〜?」

そう言ってゆるっと頬杖をつきながら、私の右目を指さした。
この私がメイクヨレを許すなんて失態、と慌ててポーチから鏡を取り出そうとすると榛名聖の手が伸びてきた。


「お直ししますから動かないでくださいねぇ。」

榛名聖の手が私の右頬を掬い取って強制的に前を向かせた。
おどけた口調からは悪ふざけを楽しんでいるのがわかる。

でもメイクに対する信用度は高いから、目元に触れられて反射的に目を細めながらも黙ってそれを受け入れる。
ポンポンと目の下を指で優しく叩く冷たい感触が心地いい。

私と榛名聖の距離の近さと行動に、教室中に静かな動揺が広がった。

「ハイ、できた⭐︎」
「お前らは朝っぱらから何やってんだ――!!」

榛名聖の手が離れていったのと同時に真上から雷が落ちてきた。
煩わしく見上げれば、広瀬真が青くなったり赤くなったりしながらワナワナと震えて立っている。

「まーくんあけましておめでと〜。」
「あけおめー。」

もはや恒例の反応にも慣れてきて、私はしれっと、榛名聖はゆるっと笑って広瀬真に手を振った。

「人の席で妙なことすんじゃねぇ!戻れ!
お前らも見てんじゃねえ!散れ!」

「ただメイク直ししてただけなのにぃ。ねっ?ひーちゃん。」

「ねー。」

まだどよめいているクラスメイト達を睨みつけてシッシッと手で払う広瀬真に、やれやれとため息をついて榛名聖は立ち上がる。

そうこうしている間にいつの間にか近江涼介は静かに着席してるし、HRの始まりを告げるチャイムも鳴った。
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