姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「いやぁ、俺も急にジュース飲みたくなっちゃってさ〜。
何か良さそうなのあったぁ?」

“なんで?”が顔に出ていたのだろう、聞いてもないのに答えた榛名聖が自販機のラインナップを眺める。

「あ、これ新商品じゃない?ドリアンソーダだって〜。
あはは、これにしてみようかなぁ。」

榛名聖があまりにマイペースで拍子抜けしてしまう。
なんだか笑えてくるほどだ。

「絶対不味いでしょ。やめといたほうがいいわよ。」

「え〜?でももう買っちゃったし。……あ、意外と美味しいよ〜?飲んでみて。」

そう言って、一口飲んだ後のドリアンがでかでかとプリントされた缶ジュースを手渡された。
恐る恐る、だけどしっかり一口飲んでみる。

弾けた炭酸と共に鼻に抜ける強烈な臭いと初めて経験するなんとも言えない甘さが口の中に広がった。

「まっっっっず!!」

「あっはは〜。引っかかったね⭐︎
臭いすごいよね、俺口つけただけで飲めなかったもん。」

「騙したの!?許せない!」

怒って喰らわせた肩パンチを榛名聖は緩い笑顔で受け止める。
調子を取り戻した様に見える私を見下ろしているその顔は、眉が少し下がって目も穏やかに細くなった心からの笑顔だ。

「ねぇ、ひーちゃん。今日ひーちゃん家にご飯食べに行っていい〜?」

「いい、けど……今日兄ちゃん達ちょっと遅めだよ?飲み会とか、卒論するとかで。」

「いいのいいの。あ、それなら夕飯作って待ってようか〜。」

「それもそうね。じゃあ帰りにスーパー寄って帰ろ。」

「そうしよ〜⭐︎」

文字通りにいつも通りの榛名聖の調子に引っ張られて、いつのまにか胸のモヤモヤを忘れてしまった。
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