姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep179 なんでそんな顔してんだよ
昼休みも後半分になった頃、私と榛名聖は談笑しながらいつもの教室のドアを開けた。
「遅かったな。」
先にテーブルに着いていた広瀬真が、浮かない顔で振り返る。
近江涼介はいないみたいだ。
――あ、ちょっぴりモヤモヤを思い出してしまった。
「ジュース買いに行ってたからねぇ。
ね、ひーちゃん?」
先に中に入った榛名聖が、振り返って笑う。
そのおかげでハッとして、「そうそう」と頷いた。
榛名聖はいつもの椅子に着席すると、私が一口飲んだだけのドリアンソーダを机に置く。
それを見た広瀬真は訝しげに口端をヒクつかせた。
「んだそれ。美味いのか……?」
「ううん、すっごく不味いよ〜?
飲んでみて。俺とひーちゃんと間接キスになるけど⭐︎」
「だ……ッ!誰が飲むか!!」
見慣れたやりとりに救われながら、その間に私もテーブルに着く。
榛名聖が広瀬真に「ムッツリ⭐︎」と言って笑い、広瀬真がそれを否定したのを最後に、しばらく微妙な沈黙が訪れた。
お弁当を広げる音や、市販のパンのビニール袋が擦れる音が響く。
咀嚼音まで聞こえそうな静寂を、最初に破ったのはすでに昼食を済ませた広瀬真だった。
「……さっき、どうしたんだよ。」
気まずそうに眉を顰め、唇を突き出すようなごにょごにょとした喋り方だ。
「さっき?なんのことよ?」
テーブルに広げたお弁当を食べながら、怪訝そうに首を傾げる。
「廊下で栗谷と喋ってただろ。
その後、なんか……変な顔してた。」
廊下でのやりとりを見てたのか。
でも変な顔とは心外だ。色んな意味で。