姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.180 ごめんね、まーくん


旧校舎の教室には、再び沈黙が訪れる。

真は未だにキツく眉根を寄せて俯き黙ったまま。
聖は涼しい顔で窓の外を眺めている。

「姫ってさ……」

言いづらいことを絞り出した様に真が話し始める。
そこで聖の視線が真へと移って、その続きを伺っている。

「姫って、あー……姫は、その、涼介のことが――……」
「好きだろうね。無自覚だけど。」

いつまでも進まない話に痺れを切らした様に、聖がズバリと遮った。

真は「ハッキリ言い過ぎだろ」と聖に抗議すべく顔を上げるが、聖の冷淡な感情のない笑みに固まった。

「ひーちゃんは多分涼ちゃんを異性として見てるよ。

ただ、それをひーちゃんが自覚することはないし、できないだろうね。今のままじゃ。」

「……どういうことだよ?」

思惑通りに食いついてきた真に、聖は心の中で微笑む。

――そして、後の内容をきちんと理解させる様にゆっくりと話し出した。

「ひーちゃんはさ、今まで異性に恋愛対象としてしか見られたことがないんだよ。」

聖の言葉が真の胸を刺す。
心当たりに指先にピクリと力が入った。

「そのせいで同性には嫉妬の対象としてしか見られなくて、友達を作るチャンスを奪われ続けてきている。

だからひーちゃんにとって恋愛感情は憎むべき余計な感情なの。
ここまでは理解(わか)るでしょ?なんとなく。」

真は静かに頷く。
姫が女への復讐にこだわっている姿も、その考察に矛盾はない。

「それともう一つ。ひーちゃんってさ、“友達”を神格化してるよね。」
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