姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

打って変わって思ってもみなかった聖の発言に、真の眉間の皺が緩む。

それでも確信を持っている聖の妖しく微笑む視線は、少しも揺るがない。

「“友達ならこうする”とか“友達はこういうもの”って発言が不自然なくらい今まで多かったと思わない?
“友達”ってワードにすら最初は照れてたよね。」

「それはそう、だけど。
それはアイツに今まで友達がいなかったからで……」

「そう。だからこそひーちゃんの中の友達像ってすごく美しいんだよね〜。
困ってたら身を挺してでも助けて当然、大切に思って当たり前、絶交なんてあり得ないってさ。」

虚空を見つめる聖の目が優しく緩む。

「ホントはそんな友達関係なかなかないのにね。」

嘲笑気味に言うのに、そんな姫を愛おしんでいる様にも見えた。

「ひーちゃんにとって“友達に恋をする”なんてあってはならないことなんだよ。

恋をしたら大切な友達関係が壊れるって無意識に強く思ってる。」

聖の言ったことは、的を射ているように思える。
だからこそ、姫の心の内を思って真は深刻な顔をしたまま黙っている。

「そこでひーちゃんが自分の気持ちを自覚できない話に戻るわけだけど――もうわかるでしょ?

恋をしたって必ずしも友情が壊れるわけじゃないって気付かないと、ひーちゃんは心と理性がちぐはぐなまま苦しみ続けるってこと。」

話しながら観察していた真の顔は、考え込んでいる様に見える。
意図した通りに悩んでくれて、もういいかと聖は一息ついた。

「さーて、俺も先に教室に戻ろうかな〜。
あ、これあげるねぇ。美味しくないやつだけど〜。」

聖は立ち上がり、ドリアンソーダの缶を真の前に置き直す。
見下ろした真はずっと押し黙ったままだったが、あとは成り行きに任せるのみと何も言わずに教室から出て行った。

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