姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.2 お姫様と王子共
――で、どうしてこんなことになっているんだっけ?
どこにでもある古い普通の教室の真ん中で私は俯き正座していた。
その割にオシャレな丸テーブルに大きなソファが設置された、学校に似つかわしくない異質な空間。
なにこれ、なんか気持ち悪い。
「涼ちゃーん、これクリーニングしないと落ちないよ〜。
一応洗ってみたんだけど〜。」
引き戸の開く音と共に、緊迫した空気を打ち破る様な脱力した声がカットインする。
それで我に返って状況を思い出した。
そうだ。
黒髪の制服を汚してしまったから、「洗うよ」って言って着いてきたんだった。
ここはもう使われていない旧校舎。
敷地内にあるのに鬱蒼とした雑木林に囲まれ隠されて、生徒から認知されているのかも怪しい場所だ。
そして私の目の前には今、ものすごい威圧感を放ち横柄にソファに座る男が1人。
――無愛想な黒髪、もとい、
近江 涼介だ。
端正すぎる顔はいつでもどこでも無表情。
必要最低限しか喋らず、何を考えているのか分からないミステリアスさが彼の魅力。(私の感想ではない。生徒の下馬評。)
血が通っているのかも怪しい。私から言わせれば作り物のロボットだ。
そっと様子を伺う様に顔を上げると、艶やかな黒髪から覗く切れ長の目に睨まれた。
不覚にもその鋭さに圧されてひゅっと喉が鳴る。慌ててまた下を向くと、キンキン声が耳をつんざいた。