姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.190 イライラ、モヤモヤ
昼休み。
旧校舎のいつもの教室で榛名聖が淹れたお茶を飲みながら、のんびり過ごしていた。
近江涼介は椅子に深く腰を落として、今日も今日とて本の虫になっている。
それを眺めながら榛名聖が近江涼介に話しかけた。
「そういえばさぁ、涼ちゃんさっき栗谷さんに本あげてたよね。
何の本を貸してたの〜?」
「……ゲホッ」
飲んでいた紅茶を喉に引っ掛けた。
近江涼介が、天音ちゃんに?
――いつ?どこで?
何故か胸がギュッと締め付けられる。
心臓が耳の内側で脈打って、息が熱くなった。
隣で勉強に勤しんでいた広瀬真が、「大丈夫かよ」と呆れながらティッシュを差し出してくる。
――いや。
友達同士、仲良くなるのはいいことだ。
ティッシュで口元を拭いながら、聞いてしまったものは仕方ないと覚悟を決める。
よし、ドンとこい!と近江涼介を睨んで問いの答えを待った。
「小説。前話した時に読んでたやつに興味持ったらしいから、読み終わったら貸すって言った。
……で、今日。」
覚悟したのに。
ズドンとボディブローを喰らったような感覚。
本の貸し借りを約束した時の近江涼介と天音ちゃんのやりとりを想像して、自分で自分に追い打ちをかけてしまう。
「へぇ〜。栗谷さんも本好きなの〜?」
「さぁ?よく読むとは言ってたな。」
「……それは本が好きってことなんじゃねーの?」
何でもない世間話のように会話を続ける3人に、どんどん置いていかれてしまう。
ただ本の貸し借りしたってだけの話だし。
「へぇ」って話を聞けるのが、友達として普通の振る舞いの筈なのに。
イライラ。モヤモヤ。
何でこんな風になるんだろう?