姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
私の様子を見た近江涼介は、まるで気づいていないかの様にすぐに視線を外に向けて手を離す。
近江涼介の触れていた髪を風が攫って、寒さが増した気がした。
「……1時間目、なんだっけ。」
「え!?ああ、えと、英語?だったような……」
急に脈絡のない話題を投げかけられてハッとして、焦って返答をする。
それから英訳やったかとか、何でもないやりとりを続ける内に頭の中は少しずつ冷静さを取り戻していく。
――けれど、心臓はまだドキドキと音を立てている。
やっぱり完全にいつも通りとはいかない。
近江涼介といると世界はキラキラして見えるし、心臓の音もいつまでもずっと落ち着かない。
でも、今は不思議とそれが嫌でもなくて。
(“恋”って難しい感情だなぁ。)
だけど、嬉しくて楽しいものなんだっていうのは
ほんのちょっとわかった気がした。