姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.199 消化不良


無表情で無視してる様に見えて多分話を聞いている涼介と、昨日話せなかった分ひたすら涼介に喋りかけ続ける姫。
その様子を数十メートル後ろを歩く聖と真が見ていた。

「心配する必要ないくらい、いつも通りに戻ったねぇ。」

あはは〜、と気の抜け切った笑顔の聖の隣で、真は何とも言えない様な顔をしている。

それを聖は見逃さず、身を屈めて真の顔を覗き込む。
――その微笑みは、目の奥に妖しい光を宿していた。


「“消化不良”って顔してるねぇ。まーくん。」

「あ゙?何のことだよ?」

「何のことだろうねぇ。」


のらりくらりと核心に触れかけては(とぼ)けて離れる聖の態度に、真は不快そうに眉を顰める。


「別に俺は元からアイツとの関係をどうこうしようと思ってねーし。
いつも通り能天気にバカやってんならそれでいい。」

仲良さげに前を歩く姫と涼介からフイと視線を外して、真はため息混じりにキッパリとそう言った。

その立ち姿は物憂げなのに、タラタラした未練がましさをまるで感じさせなかった。


(なんだ、自分の役割をわかっているじゃないか。)

聖は内心驚いて、言葉に迷う。
その献身さを目の当たりにして改めて真の恋心を利用した罪悪感が胸にチラついた。

「なんかごめんねぇ、まーくん。」

「は?何がだよ?」

「……鈍感バカだって馬鹿にしてて。」

「お前……やっぱり馬鹿にしてやがったのか。」


――今日の冬空は空気も読めず青く澄み切っている。

それぞれに抱える思いはバラバラ。
スッキリした者もいれば、残った心の靄を解消しようとしている者もいる。

だけど望むことは同じ。


“友達と過ごすいつも通りの日を、今日も明日も続けたい”


「榛名聖!広瀬真!おはよー!」

不意に振り返った姫が真と聖の存在に気付き、嬉しそうに大きく手を振る。

「うるさいのに見つかった。」

「朝から元気だよねぇ。」

口では憎まれ口を言うのに、その顔は満更でもなさそうに笑っている。
立ち止まって聖と真を待つ2人に追いついて、4人一緒に賑やかに校舎へと入っていった。
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