姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「っ、悪い。」

パッと離れた手と逸らされた顔。
こっちを向いて無防備に晒された広瀬真の耳が真っ赤になっているのに気付いてしまった。

「いや、……こっちこそごめん。」

こんなの自惚れるなと言う方が無理だ。

(やっぱり消化できてないじゃない。)

消化できないと苦しいものなのか、そもそも消化とはどうしたらできるものなのか、何もかもがわからない。

顔を赤くしながら私の方を見ない様にしている広瀬真が今何を思っていて、何を望んでいるのかも。

ソファの奥に入り込んでしまったスマホを、手を突っ込んで救出する。

「はー、あって良かった!帰るわよ、広瀬真。」

正解がわからないから見なかったフリ、気付いていないフリをするしかなくて、気丈な態度を取り続ける。

それでもなんとなくお互いぎこちない。

それから私達は目も合わせられぬまま当たり障りのない会話をしながら校舎を出て、各々帰宅したのだった。
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