姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
伏せた睫毛がかすかに揺れる。
再び広瀬真と目を合わせると、凛とした目の奥が不安そうに揺れているのに気付いた。
「――バカ。」
……広瀬真とのたくさんの出来事を思い出して、最初に出てきた言葉はそれだった。
「アホ。単純。すぐ怒鳴る。口悪い。美的センスも悪い。」
ふと、古い記憶を思い出す。
『……私、決めてるんだ。
コイツを落としたあかつきには、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせてやるって。』
広瀬真達に出会ったばかりの頃に決めた、あの記憶。
突然始まった悪口に、広瀬真はちょっと驚いていたけどそれでも黙って聞いてくれている。
「すぐブスって言う。すぐ怒る。不器用。友達思いで他人のために損するバカ。」
「お前……バカって2回も言っただろ。」
片眉を下げて苦笑する広瀬真に、私も小さく笑う。
そしてまだ話し続ける。
私を好きでいてくれた大切な友達に、ありったけの敬意と親愛を込めて。
「頑固。お人好し。そしてやっぱり特大バカ。
――――ごめん。」
その3文字に、広瀬真は瞳が揺らぐのを堪えるように眉根を寄せる。
榛名聖の言う通り、傷つけないなんて無理だった。
「でも、」
だけど、どうしてもこれだけは伝えたい。
「ありがとう。」