姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.216 恋と友情 side.広瀬真
「ありがとう。」
そう言って姫は切なさを隠したような、強がった顔で笑っている。
最後に紡がれた言葉はたった5文字なのに――
そこには姫の心からの感謝と敬愛が込められているように感じて胸がじわっと熱くなった。
(――言って良かった。)
姫は俺と同じようには、俺のことを想っていない。
わかりきっているのに気持ちを伝えることも、示した友情を裏切ることも、姫を傷付けることになるんだと思っていた。
……それなのに、実際はどうだ。
姫はちゃんと俺と向き合って、
応えられない俺の気持ちを真正面から受け止めて、
そして気持ちを返してくれた。
“好きだ”なんて言ったところで意味がない。
返事なんて聞くまでもなくわかっていると決めつけていたのに、そんなことなかった。
今、すごく報われたような気持ちがしている。
切なくて、ほんの少し痛くて苦しくて。
――でも、心から清々しいこの感覚に、自然と笑顔が溢れてくる。
「バカって言い過ぎだろ。ブ――ス。」
今日初めて悪口に姫が驚いて目を見開き、そして眉尻を下げてくしゃりと笑う。
その笑顔を俺が引き出したのだと思ったら、くすぐったくてとても嬉しい。