姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.217 涼介の心 side 近江涼介


旧校舎のいつもの教室に、今日は陽の光が差し込まない。
空はどんよりと分厚い雲が覆って、春らしくない寒々しさだ。

「――で?

なーんで涼ちゃんはひーちゃんのことを避けているのかなぁ?」

目の前に座る聖が鋭く俺を睨む。
その顔にいつもの笑顔はなく、苛立ちを隠すことなく押し出している。

“距離を置くのは1番最悪な手だと言っただろう”

そう責めている顔だ。

「…………。」

フイ、と静かに視線を逸らす。
胸を満たす暗く澱んだこの気持ちを、見透かされたくはなかったから。

「ひーちゃんの気持ちもしようとしてることも全部勘付いてるよねぇ?
それなのになーんーで、避けてるのかって聞いてるんだけど〜?」

聖が痺れを切らして机面を叩く。
こんなに感情的なのも珍しい。

――それだけ姫を大切に想っているということなのだろう。

過干渉だとは思うが、アイツのために迷わず立ち回れるその身軽さが羨ましい。

「涼介はどう思ってんだよ。――姫のこと。」

真の真っ直ぐで芯の通った声が、イライラしてピリついた雰囲気に切り込んだ。

その眼光は強く鋭くて、“逃げるなよ”というメッセージを強く発している。

――俺にはない、意志の強い目。

出会った時からそうだった。
いつか読んだ物語に出て来た主人公みたいな眩しさ。

それが強い引力になって、胸の奥に仕舞おうとした気持ちを口まで引き上げた。


「大切に思っている。
――すごく。」

自分の強い気持ちと直面する感覚に慣れず、ぼんやりとした視線は下を向く。

真も聖も驚き、空気を張り詰めさせていたの忘れてぽかんとしている。
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