姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.218 帰り道
夕方、といっても春が目前に迫るこの頃はすっかり明るくなった。
今日は天音ちゃんにたくさん話を聞いてもらってしまったなぁ、といくらかスッキリ、でもちょっと情けない気持ちで帰り道を歩いている。
家に帰る道の途中で、図書館への曲がり道に差し掛かるとふと立ち止まってその通りをジッと見つめる。
行ったところでどうせいない。
そんなことわかっているのに、足が進路を変えようとしたり戻したりを繰り返した。
――と、ちょうど図書館のあるあたりの場所からウチの制服を着た長身で黒髪の男が出てくるのが目に入る。
間違いようもなく、あれは近江涼介だ。
遠いけど目が合ったのがわかって、何故か咄嗟に角に隠れた。
心臓の音が耳奥で鳴って、時間が経つごとに全身に波紋を広げていく。
「……何やってんの。」
よその家の塀に張り付いていた私の元に辿り着いた近江涼介が、不審者を見る目で私を見下ろす。
緊張で少し顔を赤らめながら、気まずく視線を持ち上げると観念した様に笑顔を作った。
「きっ、奇遇ね!近江くん!
今図書館帰り?
私もちょうど図書館で宿題でもやろうかなって思ってたところでね――……!」
態とらしくオホホと笑う私を、近江涼介は微動だにせず見下ろしたままだ。
大仰なテンションと身振りで喋っていたのが恥ずかしくなってきて、ぐぬぬと顔を顰めた。
「姫に会えるかと思って。」
その言葉に、時が止まる。
心臓だけがドクンと大きく脈を打った。
「……じゃあ、なんで私のこと避けてたの!」
ぶっきらぼうに責め立てる。
怒ってるわけではない。ただ緊張しているだけだ。
「悪かった。」
穏やかで淡白な口調。
ただ気持ちはこもっている様に感じて、許してしまった自分は甘い。
「話、聞きたくなかった?」
「……そうと言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃない。」
「なにそれ、意味わかんないよ。」