誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
 


 その頃、ほたるは、会社の人間にほたるの写真を見せようとした、という明巳の話をいつものキッチンで聞いていた。

 見せた、じゃなくて、見せようとしただけなんですね、と思ったが、明巳はそこで咳払いし、

「そうだ。
 他の部屋も片付けていいぞ」
と言ってきた。

「は?」

「この屋敷の他の部屋、何処に入って片付けてもいいぞ」

 お前なら、と言う。

「……なんですか、それは。
 もしや、信頼の(あかし)なんですか?」

 そんな信頼、いらない、と思ってしまう。

 屋敷の何処を好きにしてもいいというのも、妻の写真を人に見せようとするのも、明巳にとっては、愛情表現の一種だった。

 特に写真に関しては、今までどうせ形の上の結婚だからとオープンにしていなかった妻を見せるということで。

 今までにないことだった。
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