誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
 


「明巳は素直じゃないけど。
 どうも嫁とあの家で上手くやっているようだから、杉田さんに家は譲らないかもしれないよ、美春ちゃん」

 そう美春は、明巳の父に言われた。

「今、じいさんがあいつをまた修行に出しているようなんだが。

 嫁に服のひとつも買って帰るようなら、まあ、あいつにしては上出来なんだが……」

 そんなことも言って笑っていた。

 明巳さんが女性に服を買うとか。
 そんなところ想像もつかないんだけど。

 もし、そんなことがあるなら。
 明巳さんは、あのほたるとかいう嫁を気に入っているということなの!?

「……嫁に愛を注ぐとか。
 そんな明巳さんは明巳さんじゃないわ」
と美春は、明巳に、

「待て。
 お前の中の俺はどんな感じだ……?」
と言われそうなことを呟きながら、ロビーを早足に歩いていた。

「あ、お疲れ様で……」
と笑顔で言ってきた若田の腕をつかんで引き寄せると、

「若田くん、社長とあの嫁はどんな感じ?」
と美春は訊く。
< 178 / 277 >

この作品をシェア

pagetop