誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
ほたるはその日、課長について会議に行くことになった。
いつも行っている先輩が風邪で休んでしまったからだ。
『ごめんごめん。
でも、ほんと、たいしてやることないから。
賑やかしみたいなもんよ』
先輩はそう言っていた。
この会社のロビーに入るのははじめてではない。
自分の会社よりちょっと広く。
ちょっとだけ新しい建物。
なのに、妙に落ち着かない気持ちになるのは、ここが明巳さんのいる会社だからだろうか、とほたるは思う。
まあ、普通に会社を訪ねていって、社長と出会う機会なんてないよね、と思っていたのだが、受付を済ませてすぐに出会ってしまった。
いや、明巳ではなく若田にだ。
「あっ、ほたる様じゃないですかっ」
様はやめてください……、
とほたるは思っていたが、若田はこれでも、ぐっとこらえた方だった。
本当は、彼は、奥様と呼ぼうと思っていたのだ。
幸い、課長は知り合いに出会ったらしく、離れた場所で話していた。