誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
「社長に会いにいらしたんですか?」

 そうニコニコしながら若田がやってくる。

 明巳が、
「若田、感じがいいだろう。
 まあ、まだ新人でいろいろやらかす奴ではあるんだが。

 あいつがいるとちょっと和むから重宝がられている」
と言っていたのをほたるは思い出していた。

「いえいえ。
 仕事で来たので――

 あの、私のことは、有働とお呼びください」

「有働さんですか。
 わかりました」

 あ、そうだ、と若田は辺りを窺うと、ちょっと声を落として言った。

「そういえば、この会社、社長のはとこに当たる方もいるんですが、ご存知でしたか?」

 いいえ。
 親族の顔合わせも、結婚式も、これから先のことを考えて、ぼんやりしていたので、誰の顔も見てないし、話も聞いていませんでした、
とほたるは思う。
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