秘めた恋は、焔よりも深く。
炎の揺らめきが、二人の横顔を照らしている。
ブランケットの下で、美咲はまだ少し強張ったまま炎を見つめていた。
龍之介はしばらく黙っていたが、やがて視線を横に滑らせる。
炎の赤に染まる彼女の頬――その表情が胸に焼きついた。
「……こうしてお前と並んで座ってるだけで、十分すぎるくらい幸せだ」
薪のはぜる音だけが響くテラス。
すこし冷えるが、澄みきった空気が心地よく、耳を澄ませば物音ひとつしない。
龍之介はふと口を開いた。
「……静かだな。まるで世界に俺たちだけが残されたみたいだ」
そう言って、美咲の方へ視線を向ける。
炎に照らされた彼の横顔には、柔らかな笑みが浮かんでいた。
「何か飲むか?」
龍之介がふと問いかけると、美咲は思い出したように微笑んだ。
「あ、先ほどコンシェルジュの方が、ホットワインとチョコレートを持ってきてくださったんです」
そう言って、美咲は隣の小さなテーブルを指さした。
グラスに注がれた赤い液体から、ふんわりと甘い香りが立ちのぼっている。
「素敵な気遣いですよね。……飲みますか?」
「ああ、もちろん」
龍之介の声が低く響く。
美咲はブランケットから少し身を乗り出し、グラスをひとつ取り上げた。
両手で包み込むように持ち、そのまま龍之介へと差し出す。
炎の揺らめきに照らされた瞬間、彼女の仕草はどこか儀式めいて見えた。
龍之介は静かにそれを受け取り、指先がほんの一瞬、美咲の手に触れる。
その瞬間、思わず眉を寄せる。
「……冷たいな」
短くそう呟き、龍之介は立ち上がった。
ガラスのドアを開け、テントの中に戻っていく。
やがて手にして戻ってきたのは、自分のジャケットだった。
「寒いだろ。……これ着とけ」
低い声とともに、美咲の肩にそっと掛ける。
大きなジャケットに包まれると、ふわりと彼の香りが漂った。
「ありがとうございます……」
龍之介はグラスを傾け、ふっと笑みを浮かべた。
「……このホットワインは、うまいな」
「そうですね」
美咲もまた、両手でグラスを包み込みながら頷いた。
「昔、知人宅のパーティーで出されたことがあったんだが……その時は正直、おいしいとは思えなかった」
「そうなんですか?」
美咲が少し意外そうに首をかしげる。
龍之介は炎に視線を移し、低く続けた。
「でも今夜のは違う。一緒に味わう“愛しい女”と、この新鮮な空気のおかげだろうな……やけにうまく感じる」
炎の揺らめきが、彼の横顔を赤く照らす。
真っ直ぐな眼差しに捉えられ、美咲の胸は熱く震えた。
グラスに満ちる赤い液体よりも、その言葉の方がずっと酔わせる…そう思わずにはいられなかった。
心地よい沈黙が流れる中、美咲がふいに小さなくしゃみをした。
「……そろそろ部屋の中に入ろうか」
龍之介が穏やかに言い、立ち上がる。
暖炉の火をきちんと消したのを確認してから、美咲を促してテントの中へ。
ガラスのドアを閉めると、外気の冷たさが遮断され、ほっとした温もりが戻ってくる。
龍之介は迷いなくカーテンを引いた。
外の視線も星明かりも遮り、この空間が完全に二人だけのものになる。
美咲はその音を聞きながら、胸の奥にじんと広がる緊張を抑えきれなかった。
もう、隠れる場所はどこにもない。
ブランケットの下で、美咲はまだ少し強張ったまま炎を見つめていた。
龍之介はしばらく黙っていたが、やがて視線を横に滑らせる。
炎の赤に染まる彼女の頬――その表情が胸に焼きついた。
「……こうしてお前と並んで座ってるだけで、十分すぎるくらい幸せだ」
薪のはぜる音だけが響くテラス。
すこし冷えるが、澄みきった空気が心地よく、耳を澄ませば物音ひとつしない。
龍之介はふと口を開いた。
「……静かだな。まるで世界に俺たちだけが残されたみたいだ」
そう言って、美咲の方へ視線を向ける。
炎に照らされた彼の横顔には、柔らかな笑みが浮かんでいた。
「何か飲むか?」
龍之介がふと問いかけると、美咲は思い出したように微笑んだ。
「あ、先ほどコンシェルジュの方が、ホットワインとチョコレートを持ってきてくださったんです」
そう言って、美咲は隣の小さなテーブルを指さした。
グラスに注がれた赤い液体から、ふんわりと甘い香りが立ちのぼっている。
「素敵な気遣いですよね。……飲みますか?」
「ああ、もちろん」
龍之介の声が低く響く。
美咲はブランケットから少し身を乗り出し、グラスをひとつ取り上げた。
両手で包み込むように持ち、そのまま龍之介へと差し出す。
炎の揺らめきに照らされた瞬間、彼女の仕草はどこか儀式めいて見えた。
龍之介は静かにそれを受け取り、指先がほんの一瞬、美咲の手に触れる。
その瞬間、思わず眉を寄せる。
「……冷たいな」
短くそう呟き、龍之介は立ち上がった。
ガラスのドアを開け、テントの中に戻っていく。
やがて手にして戻ってきたのは、自分のジャケットだった。
「寒いだろ。……これ着とけ」
低い声とともに、美咲の肩にそっと掛ける。
大きなジャケットに包まれると、ふわりと彼の香りが漂った。
「ありがとうございます……」
龍之介はグラスを傾け、ふっと笑みを浮かべた。
「……このホットワインは、うまいな」
「そうですね」
美咲もまた、両手でグラスを包み込みながら頷いた。
「昔、知人宅のパーティーで出されたことがあったんだが……その時は正直、おいしいとは思えなかった」
「そうなんですか?」
美咲が少し意外そうに首をかしげる。
龍之介は炎に視線を移し、低く続けた。
「でも今夜のは違う。一緒に味わう“愛しい女”と、この新鮮な空気のおかげだろうな……やけにうまく感じる」
炎の揺らめきが、彼の横顔を赤く照らす。
真っ直ぐな眼差しに捉えられ、美咲の胸は熱く震えた。
グラスに満ちる赤い液体よりも、その言葉の方がずっと酔わせる…そう思わずにはいられなかった。
心地よい沈黙が流れる中、美咲がふいに小さなくしゃみをした。
「……そろそろ部屋の中に入ろうか」
龍之介が穏やかに言い、立ち上がる。
暖炉の火をきちんと消したのを確認してから、美咲を促してテントの中へ。
ガラスのドアを閉めると、外気の冷たさが遮断され、ほっとした温もりが戻ってくる。
龍之介は迷いなくカーテンを引いた。
外の視線も星明かりも遮り、この空間が完全に二人だけのものになる。
美咲はその音を聞きながら、胸の奥にじんと広がる緊張を抑えきれなかった。
もう、隠れる場所はどこにもない。