秘めた恋は、焔よりも深く。
二人はそれぞれ椅子から立ち上がり、アウトドアに適した服装へと着替え始める。
龍之介は軽快なジャケットに腕を通し、美咲は落ち着いた色合いのパンツスタイルに着替えた。
動きやすさと同時に、どこか大人の余裕を漂わせる装いだ。
「今からは乗馬体験が入ってます」
と、スタッフに笑顔で案内された。
美咲は思わず、龍之介の横顔を見た。
「……聞いてませんでした」
「俺も。完全に“カップル体験”仕様だな、このキャンプ」
困ったように笑う龍之介の声は、けれどどこか楽しげで、
美咲もふと、肩の力が抜けた。
手綱を握る指が、少しだけ強張る。
ゆっくり歩き出した馬の背中で、美咲は視線を落としたまま、深呼吸した。
「緊張してる?」
横に並んだ龍之介が、優しく問いかける。
「……少し」
小さく答えると、龍之介の声が低く笑った。
「大丈夫だ。馬も俺も、ちゃんと支えてる」
その一言に、美咲は不思議と安心を覚える。
風が頬をなで、木漏れ日が揺れる中で、馬の揺れに合わせて心もほどけていくようだった。
ふと顔を上げた美咲の横顔に、陽の光が差し込む。
長い睫毛の影が頬に落ち、柔らかな笑みが浮かんだ瞬間、
龍之介は手綱を握る指に力を込め、目を逸らせなくなった。
「……いい顔をするな」
思わずこぼれた声に、美咲が驚いて振り向く。
けれど龍之介は、ただ真っすぐに見つめていた。
馬から降りると、スタッフがタオルを手渡してくれた。
緊張から解き放たれた美咲は、額に浮いた汗を拭いながら、安堵の息をつく。
「お二人ともお疲れさまでした。この後はカップル限定のトレッキングツアーをご案内します」
笑顔で差し出されたパンフレットに目を落とすと、
三段階に分かれたコースが載っていた。初心者から上級者まで選べるらしく、
さらにガイドも同行するため、安全に楽しめるのが売りだと説明される。
「……本当に“カップル専用”づくしだな」
龍之介が低く笑うと、美咲も思わず頬を緩めた。
「中級を終えて、余裕がありそうなら上級もやってみる……というのはどうだ?」
龍之介が横目で美咲を見ながら、探るように言った。
「え……上級?」
思わず声が上ずる。
想像しただけで、少し不安が胸をかすめる。
「もちろん、無理はしない。けど……一緒なら行けるだろ?」
軽く笑いながら差し出された視線に、美咲の頬が熱を帯びた。
少しの挑戦を促すような彼の言葉は、不思議と心地よく響いた。
中級の道のりは思っていたほど険しくなく、むしろ心地よい運動になった。
「……これなら上級も行けそうですね」
息を整えながら美咲が笑うと、龍之介がうなずく。
続けて挑戦することに決め、二人はガイドの老人の後を歩き出した。
老人は穏やかな口調で昔の登山の話を聞かせてくれる。時折振り返りながら、冗談を交えて道を案内するので、足取りも自然と軽くなった。
龍之介の横顔を見上げれば、彼も楽しげに笑っている。
ときに小さな段差で手を貸され、ふたりの指が触れるたびに胸の奥がじんわりと温まる。
そうして歩き続けるうちに、ぱっと視界が開けた。
眼下に広がる湖と、遠くの山並み。澄んだ空気が肌を撫でる。
「わあ……なんて素敵な眺め!」
思わず声がこぼれる美咲の隣で、龍之介が低く呟いた。
「……素晴らしいな」
その声音には、景色だけではない感慨が混じっていた。
龍之介は軽快なジャケットに腕を通し、美咲は落ち着いた色合いのパンツスタイルに着替えた。
動きやすさと同時に、どこか大人の余裕を漂わせる装いだ。
「今からは乗馬体験が入ってます」
と、スタッフに笑顔で案内された。
美咲は思わず、龍之介の横顔を見た。
「……聞いてませんでした」
「俺も。完全に“カップル体験”仕様だな、このキャンプ」
困ったように笑う龍之介の声は、けれどどこか楽しげで、
美咲もふと、肩の力が抜けた。
手綱を握る指が、少しだけ強張る。
ゆっくり歩き出した馬の背中で、美咲は視線を落としたまま、深呼吸した。
「緊張してる?」
横に並んだ龍之介が、優しく問いかける。
「……少し」
小さく答えると、龍之介の声が低く笑った。
「大丈夫だ。馬も俺も、ちゃんと支えてる」
その一言に、美咲は不思議と安心を覚える。
風が頬をなで、木漏れ日が揺れる中で、馬の揺れに合わせて心もほどけていくようだった。
ふと顔を上げた美咲の横顔に、陽の光が差し込む。
長い睫毛の影が頬に落ち、柔らかな笑みが浮かんだ瞬間、
龍之介は手綱を握る指に力を込め、目を逸らせなくなった。
「……いい顔をするな」
思わずこぼれた声に、美咲が驚いて振り向く。
けれど龍之介は、ただ真っすぐに見つめていた。
馬から降りると、スタッフがタオルを手渡してくれた。
緊張から解き放たれた美咲は、額に浮いた汗を拭いながら、安堵の息をつく。
「お二人ともお疲れさまでした。この後はカップル限定のトレッキングツアーをご案内します」
笑顔で差し出されたパンフレットに目を落とすと、
三段階に分かれたコースが載っていた。初心者から上級者まで選べるらしく、
さらにガイドも同行するため、安全に楽しめるのが売りだと説明される。
「……本当に“カップル専用”づくしだな」
龍之介が低く笑うと、美咲も思わず頬を緩めた。
「中級を終えて、余裕がありそうなら上級もやってみる……というのはどうだ?」
龍之介が横目で美咲を見ながら、探るように言った。
「え……上級?」
思わず声が上ずる。
想像しただけで、少し不安が胸をかすめる。
「もちろん、無理はしない。けど……一緒なら行けるだろ?」
軽く笑いながら差し出された視線に、美咲の頬が熱を帯びた。
少しの挑戦を促すような彼の言葉は、不思議と心地よく響いた。
中級の道のりは思っていたほど険しくなく、むしろ心地よい運動になった。
「……これなら上級も行けそうですね」
息を整えながら美咲が笑うと、龍之介がうなずく。
続けて挑戦することに決め、二人はガイドの老人の後を歩き出した。
老人は穏やかな口調で昔の登山の話を聞かせてくれる。時折振り返りながら、冗談を交えて道を案内するので、足取りも自然と軽くなった。
龍之介の横顔を見上げれば、彼も楽しげに笑っている。
ときに小さな段差で手を貸され、ふたりの指が触れるたびに胸の奥がじんわりと温まる。
そうして歩き続けるうちに、ぱっと視界が開けた。
眼下に広がる湖と、遠くの山並み。澄んだ空気が肌を撫でる。
「わあ……なんて素敵な眺め!」
思わず声がこぼれる美咲の隣で、龍之介が低く呟いた。
「……素晴らしいな」
その声音には、景色だけではない感慨が混じっていた。