秘めた恋は、焔よりも深く。
美咲は俯いたまま、両手を膝の上で固く組んでいた。
「美咲、顔を見せて」
低い声が促すように響く。
おそるおそる顔を上げると、真っ直ぐな眼差しが彼女を捕らえた。
「……ごめんな。つらい思いをさせて」
龍之介の声はかすかに震えていた。
「俺が言ったこと、本心から出た言葉じゃなかったんだ」
その声に、張りつめていたものが静かにほどけていく。
美咲は何も言わず、ただ涙をこぼした。
龍之介はその涙を拭おうともせず、ただ真っ直ぐに受け止める。
やがて、震える肩を抱き寄せた。
「……嫉妬で、おかしくなったんだ」
龍之介は視線を落とし、深いため息をついた。
「自分の無力さを思い知らされた。俺が守りたい女が、別の男に守られて……
しかもそいつは、お前のことを好きなやつだ。二人きりでいる姿を見たとき、信じられなかった。
まるでお前を失ったような気がして……すごく焦った」
低く押し殺した声には、自分への怒りが混じっている。
「取引先の専務でもあるし、余計に……冷静でいられなかった」
「龍之介さん……」
美咲は静かに口を開いた。
「昨日の食事会の後、みんなで一緒にエレベーターでロビーまで降りたの。
でも、ホテルを出ようとした時に、イヤリングの片方がないことに気づいて……私だけレストランに戻ったの。
スタッフの方が見つけてくださって、安心してエレベーターに乗ったら、たまたま松田専務が乗ってきただけなのよ。
本当に偶然だったの」
彼女の声は真っ直ぐで、嘘の入り込む余地がない。
「閉じ込められたとき、私は緊張で不安が募っていた。
でも専務は、その場を和ませようとお話をしてくださったの。
そのおかげでパニックにならずに、復旧を待つことができたの」
龍之介は息を呑み、しばし彼女を見つめた。
「……そうだったのか」
彼は深く息を吐き、力なく笑った。
「俺はてっきり……美咲が専務に惚れたのかと。勝手にそう思って、自信をなくしていた」
「疑ってすまなかった」
龍之介は膝に手をつき、美咲の方へ深く頭を下げた。
美咲は一瞬驚き、そして静かに問いかけた。
「ねえ……どうしてフライトの変更を知らせてくれなかったの?」
龍之介は顔を上げかけたものの、不意に視線を逸らし、口もとに手を当てた。
耳まで赤く染まっている。
「……美咲の、驚く顔が見たかったんだ」
その言葉に、美咲は目を瞬かせ、次の瞬間、思わず笑い声をこぼした。
「なにそれ……」
堪えていたものがほどけるように、二人の間にやわらかな空気が流れる。
美咲は小さく首を振り、唇を震わせながら言った。
「……私も、ごめんなさい。電話も、メッセージも、返信できなくて……。
どうしていいのか、わからなくて」
龍之介は、深く息を吐き出すように美咲を見つめ、静かに答えた。
「……いいんだ、もう」
その声音には、怒りも責めもなく、ただ美咲を包み込むような温かさだけがあった。
「美咲、顔を見せて」
低い声が促すように響く。
おそるおそる顔を上げると、真っ直ぐな眼差しが彼女を捕らえた。
「……ごめんな。つらい思いをさせて」
龍之介の声はかすかに震えていた。
「俺が言ったこと、本心から出た言葉じゃなかったんだ」
その声に、張りつめていたものが静かにほどけていく。
美咲は何も言わず、ただ涙をこぼした。
龍之介はその涙を拭おうともせず、ただ真っ直ぐに受け止める。
やがて、震える肩を抱き寄せた。
「……嫉妬で、おかしくなったんだ」
龍之介は視線を落とし、深いため息をついた。
「自分の無力さを思い知らされた。俺が守りたい女が、別の男に守られて……
しかもそいつは、お前のことを好きなやつだ。二人きりでいる姿を見たとき、信じられなかった。
まるでお前を失ったような気がして……すごく焦った」
低く押し殺した声には、自分への怒りが混じっている。
「取引先の専務でもあるし、余計に……冷静でいられなかった」
「龍之介さん……」
美咲は静かに口を開いた。
「昨日の食事会の後、みんなで一緒にエレベーターでロビーまで降りたの。
でも、ホテルを出ようとした時に、イヤリングの片方がないことに気づいて……私だけレストランに戻ったの。
スタッフの方が見つけてくださって、安心してエレベーターに乗ったら、たまたま松田専務が乗ってきただけなのよ。
本当に偶然だったの」
彼女の声は真っ直ぐで、嘘の入り込む余地がない。
「閉じ込められたとき、私は緊張で不安が募っていた。
でも専務は、その場を和ませようとお話をしてくださったの。
そのおかげでパニックにならずに、復旧を待つことができたの」
龍之介は息を呑み、しばし彼女を見つめた。
「……そうだったのか」
彼は深く息を吐き、力なく笑った。
「俺はてっきり……美咲が専務に惚れたのかと。勝手にそう思って、自信をなくしていた」
「疑ってすまなかった」
龍之介は膝に手をつき、美咲の方へ深く頭を下げた。
美咲は一瞬驚き、そして静かに問いかけた。
「ねえ……どうしてフライトの変更を知らせてくれなかったの?」
龍之介は顔を上げかけたものの、不意に視線を逸らし、口もとに手を当てた。
耳まで赤く染まっている。
「……美咲の、驚く顔が見たかったんだ」
その言葉に、美咲は目を瞬かせ、次の瞬間、思わず笑い声をこぼした。
「なにそれ……」
堪えていたものがほどけるように、二人の間にやわらかな空気が流れる。
美咲は小さく首を振り、唇を震わせながら言った。
「……私も、ごめんなさい。電話も、メッセージも、返信できなくて……。
どうしていいのか、わからなくて」
龍之介は、深く息を吐き出すように美咲を見つめ、静かに答えた。
「……いいんだ、もう」
その声音には、怒りも責めもなく、ただ美咲を包み込むような温かさだけがあった。