秘めた恋は、焔よりも深く。
週末。
朝からゆっくり過ごしていた美咲は、ふとカフェでの出来事を思い出した。
あの店の落ち着いた雰囲気と、ガラス越しに見た街の静けさ。
心のどこかで、「もう一度、あの辺りを歩いてみたい」と思っていた。
電車に揺られながら、駅をいくつかやり過ごす。
あの日降りた駅ではなく、少し遠くの駅で下車する。なんとなく、直感だった。
改札を抜けると、駅前はこぢんまりとした商店街と、小さな公園が見える。
そこから5分も歩くと、空気ががらりと変わった。人通りは少なく、緑の多い並木道。
低層の落ち着いたマンションと、遠くに見えるスタイリッシュな高層マンション。
静かで整然とした街並みに、美咲はゆっくりと歩を進めた。
(ここ……住むには、悪くないかもしれない)
目の前には、犬の散歩をする老夫婦、カフェのテラスで本を読む女性。
過度なにぎわいもなく、でも人の暮らしが感じられる。
そんな場所を探していたような気がする.....と、美咲は思った。
いくつかの角を曲がると、前に訪れたカフェが見えた。
ウインドウ越しに見える席は、あの日と同じように穏やかな時間が流れていた。
(また来てみようかな)
そんなふうに思いながら、美咲はその街の空気を、胸いっぱいに吸い込んだ。
カフェを出た美咲は、スマートフォンの地図アプリを確認しながら、次の目的地へ向かった。
今日は、数日前に予約していたマンションの内覧日だった。
駅から徒歩圏内で、静かな住宅街に佇む低層階のレジデンス。
写真では雰囲気も良く、内装も洗練されているようだった。
(落ち着いていて、でも暮らしやすそうな場所……)
数分ほど歩くと、目的の建物が視界に入る。
グレーのタイルと木目のエントランスが印象的な、5階建てのこぢんまりとしたマンションだった。
不動産会社の案内スタッフがすでに到着しており、笑顔で迎えてくれる。
「お待ちしておりました、佐倉さま。こちらが今回ご覧いただくお部屋になります」
美咲は案内されながら、周囲の建物に何となく目を向けた。
隣には、ガラス張りの高級感あるエントランスの大きなマンションが建っている。
立派すぎて少し距離を感じるような外観。
だが、特に気に留めることもなく、美咲はエントランスを通り抜け、建物の中へと入っていった。
室内は想像していたよりも明るく、風通しがいい。
コンパクトながら収納も多く、ひとり暮らしにはちょうど良い広さ。
窓から見える緑が、心を和ませる。
「……いいかも」
小さくそう呟いた美咲の表情は、どこか晴れやかだった。
まさか、この隣のマンションに、あの滝沢社長が暮らしているとは。
もちろん、第一秘書である黒瀬龍之介もそこに住んでいるなどと、このときの美咲は知る由もなかった。
朝からゆっくり過ごしていた美咲は、ふとカフェでの出来事を思い出した。
あの店の落ち着いた雰囲気と、ガラス越しに見た街の静けさ。
心のどこかで、「もう一度、あの辺りを歩いてみたい」と思っていた。
電車に揺られながら、駅をいくつかやり過ごす。
あの日降りた駅ではなく、少し遠くの駅で下車する。なんとなく、直感だった。
改札を抜けると、駅前はこぢんまりとした商店街と、小さな公園が見える。
そこから5分も歩くと、空気ががらりと変わった。人通りは少なく、緑の多い並木道。
低層の落ち着いたマンションと、遠くに見えるスタイリッシュな高層マンション。
静かで整然とした街並みに、美咲はゆっくりと歩を進めた。
(ここ……住むには、悪くないかもしれない)
目の前には、犬の散歩をする老夫婦、カフェのテラスで本を読む女性。
過度なにぎわいもなく、でも人の暮らしが感じられる。
そんな場所を探していたような気がする.....と、美咲は思った。
いくつかの角を曲がると、前に訪れたカフェが見えた。
ウインドウ越しに見える席は、あの日と同じように穏やかな時間が流れていた。
(また来てみようかな)
そんなふうに思いながら、美咲はその街の空気を、胸いっぱいに吸い込んだ。
カフェを出た美咲は、スマートフォンの地図アプリを確認しながら、次の目的地へ向かった。
今日は、数日前に予約していたマンションの内覧日だった。
駅から徒歩圏内で、静かな住宅街に佇む低層階のレジデンス。
写真では雰囲気も良く、内装も洗練されているようだった。
(落ち着いていて、でも暮らしやすそうな場所……)
数分ほど歩くと、目的の建物が視界に入る。
グレーのタイルと木目のエントランスが印象的な、5階建てのこぢんまりとしたマンションだった。
不動産会社の案内スタッフがすでに到着しており、笑顔で迎えてくれる。
「お待ちしておりました、佐倉さま。こちらが今回ご覧いただくお部屋になります」
美咲は案内されながら、周囲の建物に何となく目を向けた。
隣には、ガラス張りの高級感あるエントランスの大きなマンションが建っている。
立派すぎて少し距離を感じるような外観。
だが、特に気に留めることもなく、美咲はエントランスを通り抜け、建物の中へと入っていった。
室内は想像していたよりも明るく、風通しがいい。
コンパクトながら収納も多く、ひとり暮らしにはちょうど良い広さ。
窓から見える緑が、心を和ませる。
「……いいかも」
小さくそう呟いた美咲の表情は、どこか晴れやかだった。
まさか、この隣のマンションに、あの滝沢社長が暮らしているとは。
もちろん、第一秘書である黒瀬龍之介もそこに住んでいるなどと、このときの美咲は知る由もなかった。