秘めた恋は、焔よりも深く。
車が静かに停まる。
エンジン音が途切れ、夜の静けさが二人を包み込んだ。
ハンドルから手を離し、龍之介はふっと息をついたあと、美咲を横目に見やる。
「……美咲、そろそろ“黒瀬さん”じゃなくて、名前で呼んでくれ」
「え……」
不意を突かれたように、美咲の瞳が揺れる。
「恋人なのに、他人行儀なのはもう我慢できない。お前の口から“龍之介”って呼ばれたい」
低く落ち着いた声。
けれど、その眼差しには抑えきれない熱が宿っていた。
美咲はストールの裾をぎゅっと握りしめ、顔を赤らめて俯く。
「……そんな、急に言われても……」
「急じゃない。ずっと待ってた」
そう囁く声が、秋の夜風よりも熱く耳に触れた。
店の前。
ほんのり灯る提灯の明かりに照らされながら、龍之介がふいに足を止める。
「……ちょっと待て」
驚く美咲をぐっと抱き寄せると、その大きな腕の中に閉じ込める。
耳元に熱を含んだ声が落ちた。
「美咲……俺の名を呼んで」
唇がかすかに耳の輪郭をかすめ、熱い吐息が触れた瞬間、
美咲の胸の奥がくらくらと揺さぶられる。
「りゅ、龍……の、介さん……」
か細い声が夜に溶ける。
その響きに龍之介の腕の力がほんの少し強まった。
「……ああ、それでいい。もっと聞かせてくれ」
カウンターの席に並んで腰を下ろすと、炭火の香ばしい匂いがふたりを包んだ。
焼きあがった串が次々と並べられ、熱気を帯びた煙がほんのり立ちのぼる。
「……おいしすぎる!」
美咲が夢中になって砂肝を頬ばる。
龍之介は思わず笑みを深め、低く応じた。
「だろ?」
ふたりの視線が自然に絡み、同時に吹き出す。
さっきまで胸をざわつかせていた熱気が、今は柔らかく解け合う笑いに変わっていった。
カウンターに置かれたグラスを、少し頬を染めながら傾ける美咲。
ほんのりと熱燗の香りが漂い、目元も口元も柔らかくほどけていた。
「……ふふっ。おいしいですね。なんだか、こんなに食べて飲むの、久しぶりかもしれません」
少し潤んだ瞳で笑う美咲を、龍之介は黙って見つめる。
彼女が箸を取る仕草すら、妙に艶やかに見えてしまう。
「酔ってきたか?」
「……少しだけ、です」
照れたように返す美咲の肩に、龍之介の手がそっと添えられる。
思わず身を預けると、その温もりが心地よくて離れられない。
「……美咲」
名を呼ぶ声が、店の喧噪の中でもはっきりと耳に届く。
「こうして一緒にいると、ますます……離したくなくなる」
頬を赤くしたまま、けれど美咲も否定はできず、ただ小さく笑みを返した。
エンジン音が途切れ、夜の静けさが二人を包み込んだ。
ハンドルから手を離し、龍之介はふっと息をついたあと、美咲を横目に見やる。
「……美咲、そろそろ“黒瀬さん”じゃなくて、名前で呼んでくれ」
「え……」
不意を突かれたように、美咲の瞳が揺れる。
「恋人なのに、他人行儀なのはもう我慢できない。お前の口から“龍之介”って呼ばれたい」
低く落ち着いた声。
けれど、その眼差しには抑えきれない熱が宿っていた。
美咲はストールの裾をぎゅっと握りしめ、顔を赤らめて俯く。
「……そんな、急に言われても……」
「急じゃない。ずっと待ってた」
そう囁く声が、秋の夜風よりも熱く耳に触れた。
店の前。
ほんのり灯る提灯の明かりに照らされながら、龍之介がふいに足を止める。
「……ちょっと待て」
驚く美咲をぐっと抱き寄せると、その大きな腕の中に閉じ込める。
耳元に熱を含んだ声が落ちた。
「美咲……俺の名を呼んで」
唇がかすかに耳の輪郭をかすめ、熱い吐息が触れた瞬間、
美咲の胸の奥がくらくらと揺さぶられる。
「りゅ、龍……の、介さん……」
か細い声が夜に溶ける。
その響きに龍之介の腕の力がほんの少し強まった。
「……ああ、それでいい。もっと聞かせてくれ」
カウンターの席に並んで腰を下ろすと、炭火の香ばしい匂いがふたりを包んだ。
焼きあがった串が次々と並べられ、熱気を帯びた煙がほんのり立ちのぼる。
「……おいしすぎる!」
美咲が夢中になって砂肝を頬ばる。
龍之介は思わず笑みを深め、低く応じた。
「だろ?」
ふたりの視線が自然に絡み、同時に吹き出す。
さっきまで胸をざわつかせていた熱気が、今は柔らかく解け合う笑いに変わっていった。
カウンターに置かれたグラスを、少し頬を染めながら傾ける美咲。
ほんのりと熱燗の香りが漂い、目元も口元も柔らかくほどけていた。
「……ふふっ。おいしいですね。なんだか、こんなに食べて飲むの、久しぶりかもしれません」
少し潤んだ瞳で笑う美咲を、龍之介は黙って見つめる。
彼女が箸を取る仕草すら、妙に艶やかに見えてしまう。
「酔ってきたか?」
「……少しだけ、です」
照れたように返す美咲の肩に、龍之介の手がそっと添えられる。
思わず身を預けると、その温もりが心地よくて離れられない。
「……美咲」
名を呼ぶ声が、店の喧噪の中でもはっきりと耳に届く。
「こうして一緒にいると、ますます……離したくなくなる」
頬を赤くしたまま、けれど美咲も否定はできず、ただ小さく笑みを返した。