君と青空



美術の授業。


桜山中の自分の好きな景色をアクリルガッシュで描く、という授業をしている。


私は桜山中の職員室玄関のすぐ横の大きな綺麗な、若葉が茂り昨日降った雨の雫が葉に付いている桜の木を描くことにした。


美術の先生が体調不良で長期休みのため、来た隣の市で美術の先生をしている上山田(かみやまだ)先生が授業をしている。


すると上山田先生が


「えーー、とてもいい人がいたので紹介します。」


「石田さんの絵が素晴らしいです。青空とか緑の桜の木とか……」


「アドバイスして欲しい人は石田さんのとこ行くといいですよ。」


そんなこと急に言われたもんだから、顔を赤らめると、


「日奈〜見せろ〜」


「日奈さーん!!」

雷と遊星さんがこちらへ来る。

すると前の席の裕樹がクルッと私を向き、


「日奈すご!絵心あんのかよー笑」

とわざとらしく驚いてみせる。


「日奈さん、やっぱり小学校の時からすげーなー。空どーやって塗ればええ?」


「空は青色と水色をいい感じでグラデーションしつつ塗るといいよ。」


「せんきゅ!」


にこり、と遊星さんが笑う。



「日奈ー、俺の見ろよー」


と雷が差し出したのは、上手いとは到底言えない花壇に咲いたパンジーの絵。


「おー、なんかピカソみたいで良くない?」


「それ褒め言葉〜???笑」


「褒め言葉だよー!!」


なんて楽しく喋る…






………………………………………この時の私はこんな楽しい時間が永遠に続くと思っていた…………



でもそんなこと無理だったんだ…………………


この時の私はまだ知らない………………………
< 19 / 43 >

この作品をシェア

pagetop