もう女じゃないなんて、言わせない
彼と会うとき、ちゃんと“女”でいたかった。

「よかった。清楚系に見えるかなと思って選んだんだけど……」

「うん、見える。ていうか、惚れ直した。」

さらっと言うくせに、どこか照れてるのが分かる。
それがまた、ずるい。

「じゃあ今日は清楚なまま、過ごそうかな。」

「……それ、俺への挑発?」

「違うってば。」

ふたりの笑い声が重なった。
言葉にしなくても、少しずつ、距離が近づいているのがわかる。

「ね、今日はどこ行くの?」

そう聞くと、悠真は歩き出しながら、少しだけいたずらっぽく振り返った。

「……まあ、それは着いてからのお楽しみ。」

その顔が、少しだけ“オス”の顔をしていた。

私の心臓が、またひとつ跳ねる。

ベージュのワンピース。

今夜、それを脱がされることになるかもしれない――

そんな予感が、胸の奥で密かに高鳴っていた。
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