もう女じゃないなんて、言わせない
しばらく並んで歩いたあと、悠真がふと立ち止まった。

その指先が差した先には――

思わず、息を呑むような高級感あふれる外観のホテル。

エントランスは大理石張りで、シャンデリアが優雅に輝いている。

見上げると、確かに名前を知っている一流ホテルだった。

「……ここ?」

「うん。ここだよ。」

「えっ……ラブホじゃないの?」

つい、本音がこぼれた。
緊張のせいで声が少し上ずる。

すると悠真は、少しだけ睨むような目つきで言った。

「俺たちの、初めての夜でしょ。奮発したの。」

その言葉に――胸がきゅっとなった。

私のために。
この夜のために。
悠真がちゃんと、"大切にしたい"って思ってくれたことが、言葉よりずっと伝わってきた。

嬉しくて、くすぐったくて、思わず頬が緩む。

「……ありがとう。」

そう伝えると、悠真は何も言わずに笑って、手招きしてくれた。
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