恋するバッテリー

運命的な出会いside陽翔


今日もいつも通り優芽に起こされると、隣の席に知らない女子が居た。
「誰~?」優芽によると、彼女は転校生で凛音というらしい。俺の中にずっと残っている『佐藤凛音』という名前。千葉県の学校から来たというのなら間違いない。でも、彼女は否定し続ける。あんなに凄いことしたんだから素直に認めればいいのになぁ。
優芽に邪魔されたけど絶対に後で聞きだしてやる。一時間目は国語だった。これはチャンスかもしれない。「佐藤さん、教科書持ってる?良ければ一緒に見る?てか、りおって呼んでいい?」ちょっとずつ距離を詰めよう。けど、彼女は即答した。「教科書は持っているのでお構いなく。呼び方は何でもいいです。」相当警戒されてるな…。
彼女との出会いーというか一方的に俺がりおを知ったのは今年の夏のこと。俺はその時、野球がそこまで好きじゃなかった。
父さんが野球好きでほぼ無理矢理やらせられたし、俺はサッカーがしたかった。けど、夏休みのある日、俺は父さんに千葉県のスタジアムに連れてこられた。なんだよ。せっかく練習休みになってゲームしようと思ったのに。どうやら千葉県大会の準決勝らしい。
ちなみに俺のチームは都大会では初戦負けした。そこで先発を任されていたのがりおだった。父さんにお前と同い年なんだぞ!すごいよなぁ!と言われたけど。その時は「へぇー」ぐらいにしか思ってなかった。『その時は』
りおから放たれた剛速球が6年相手にバンバン三振を取っていく。俺のチームのエースも充分球速いのに…俺のチームのエースは6年で、結構球が速い。コントロールはいまいちだけど。それに比べてこの子はそれよりも遥かに球が速い。コントロールも良い。
そしてー何より楽しそう。見ているうちにどんどん目が引き寄せられる。りおのチームの攻撃。りおは一番を打っていた。けど、普通のサードゴロで、まあそうだよな。と思った。けど、りおは一瞬で一塁ベースに到着し、セーフになった。俺も足に自信はあるけど、さすがにあれほどではない。結局、りおは5年で大きな大会で5年で史上初のノーヒットノーランを成し遂げた。
すげ~!!!!「俺、あの球を受けてみたい!俺、キャッチャーになる!」隣で父さんが目を見開くのが見えた。それでも俺は続ける。
「あんなに上手ならあの子はきっと日本代表とか、すごい代表に選ばれるでしょ?だから俺もそれにでれるくらい練習して絶対あの子とバッテリーを組むんだ!」俺のちゃんとした野球人生はここから始まった。
ー陽翔さ…陽翔さん!あれ、月野先生の声…?「はいっ!?」「授業中にぼーっとしない!ここの答えは?」…やべぇ何も聞いてなかった。ここは勘で…「11!」しーん………静まりかえる教室あれ、俺やっちゃった?
「今は国語の授業よ!何言ってるの!」…まじか。
さっきの静かさとは真逆に、ドッと笑い声があふれた。
――あ
りおがめっちゃ爆笑してる。俺には警戒してばっかで見せてくれなかったけど、あの時ピッチャーやってたときみたいな楽しそうな顔。

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