あなたのヒーローになりたい。けど、まだなれないよ?
「一緒にお昼食べに行きませんか」
「嫌です」
「何で」
「理由がないからです」
(きっぱり)
俺は思わず両手を広げる。取りつく島がないなぁ。
「おごると言ったら」
「理由がありません」
「私があなたとお昼を食べたい。それは理由になりませんか」
彼女が俺を見た。しかめっ面のままで。
「なにゆえ」
「フランス語を教えていただきたいのです」
「Je ne suis pas une appli」
「Je n'en ai jamais pansé」
「貴殿はわらわをなんと心得る」
「後輩」
フランスからの帰国子女である彼女は時代劇のオタクだった。
「貴殿はフランス語を喋れるであろう」
「少しだけですけどね」
「少しとはまたあいまいな。貴殿は上級レベルじゃ」
「光栄です。お姫様」
俺が右手を胸に当てて軽く頭を下げると彼女がほんの少しだけ笑った。あ、あいまいな表現はきらいなのか。笑った。
俺は着ていたスカイブルーのサマーカーディガンを彼女の肩にそっとかける。
「何用じゃ」
「鼻声です。お姫様。空調が効きすぎているのでは。
今、管理部に電話をかけて調整していただきます」
「わらわはもう子どもではない。自分でかける」
(あぁ、可愛い)
誰にでもこんな調子なのがちょっと悔しい。いや、とても悔しい。
サラッ、と彼女の髪を撫でた。オレンジの香りがふわっと立った。想像以上に柔らかい髪だった。子猫みたい。(ずっと触っていたい)
「嫌です」
「何で」
「理由がないからです」
(きっぱり)
俺は思わず両手を広げる。取りつく島がないなぁ。
「おごると言ったら」
「理由がありません」
「私があなたとお昼を食べたい。それは理由になりませんか」
彼女が俺を見た。しかめっ面のままで。
「なにゆえ」
「フランス語を教えていただきたいのです」
「Je ne suis pas une appli」
「Je n'en ai jamais pansé」
「貴殿はわらわをなんと心得る」
「後輩」
フランスからの帰国子女である彼女は時代劇のオタクだった。
「貴殿はフランス語を喋れるであろう」
「少しだけですけどね」
「少しとはまたあいまいな。貴殿は上級レベルじゃ」
「光栄です。お姫様」
俺が右手を胸に当てて軽く頭を下げると彼女がほんの少しだけ笑った。あ、あいまいな表現はきらいなのか。笑った。
俺は着ていたスカイブルーのサマーカーディガンを彼女の肩にそっとかける。
「何用じゃ」
「鼻声です。お姫様。空調が効きすぎているのでは。
今、管理部に電話をかけて調整していただきます」
「わらわはもう子どもではない。自分でかける」
(あぁ、可愛い)
誰にでもこんな調子なのがちょっと悔しい。いや、とても悔しい。
サラッ、と彼女の髪を撫でた。オレンジの香りがふわっと立った。想像以上に柔らかい髪だった。子猫みたい。(ずっと触っていたい)