「ふしだら聖女め!」と言われて辺境に追放されましたが、子どもたちとほっこり幸せに暮らします(ただし、聖騎士団長が待ち伏せしていた!)
プロローグ
 ――聖女リデーレ様には、どうやら隠し子がいるらしい。

 そんな噂が王都でささやかれ始めたのは、いつ頃だっただろうか。
 それでも噂は噂であって真実ではないと楽天的に考えていたリデーレだが、突然、王太子でかつ婚約者であるヴィンラントに呼び出されたことで、事態は一変する。
 聖女の証である純白のローブを羽織ったリデーレが足を向けたのは、王城内にある荘厳な応接の間。磨き上げられた大理石の床に、窓から差し込む陽光が部屋を柔らかく照らす。
 ヴィンラントに仕える騎士たちが壁際に控え緊張感を漂わせる中、リデーレもまた同伴者を連れていた。
 だというのに、開口一番、ヴィンラントはリデーレに向かって暴言を吐いた。
「このふしだら聖女め! 君がこんな女だとは夢にも思わなかった!」
 ヴィンラントが大げさに肩をすくめれば、絹糸のような金色の髪がさらりと揺れる。
 その芝居がかった仕草に、リデーレは一瞬呆気に取られた。
「僕と君との婚約はなかったことにする。今日、この場で君との婚約は解消だ!」
 リデーレが理解したのは、この場で彼が婚約解消を突きつけてきたこと。しかし、それ以前の「ふしだら」が何を指すのか、さっぱりわからない。
 むしろ、なにゆえ「ふしだら聖女」だなんて、そんな不名誉な二つ名で呼ばれなければならないのか。
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